- 2009年7月 5日 23:23
- 00:日記小説
(だる・・・・・・)
雨が降ってくれて、まだましだった。この季節ねばりつくような湿気が、引っ込んでいる。
家を出るのは億劫だったけど、とりあえず買い物にでも出掛けないと、夕飯の材料がない。
--あんたたまには夕飯ぐらい作ったらどうよ。
姉の視線の威力は、私が生まれたときからまったく変わらない。年々、それは強くなってきている。
化粧をするかどうかで迷った。たかが300m。でも、やっぱり・・・・・・して行ったほうがいいよな。
意地だよ。これは。
もう生まれた頃から知ってるスーパーで、記憶の中で十数年変わってない『若奥様』にレジを通してもらう。愛想が今ひとつの『奥様』は、本当にこのスーパーに嫁いできたころとまったく変わらない。潤滑油みたいな世間話一つしない。
この人でよかった。他のおばちゃんだと、一通りの会話が用意されてる。
『まぁ、久しぶり。どうしてるの? 会社は今日は休み?』
まぁ、こっちが用意する答えだって、変わらないけどね・・・・・・。
白い買い物袋引っさげて、とっとと家に帰ろうとしたとき。
「・・・・・・!」
呼ばれた?
男の人の声で、そのニックネームで呼ばれるのは久しぶりだ。
振り返って、それから、周りをぐるぐる見回す。白い軽自動車の脇、こっちを伺うその顔を、じっと見つめた。
「こんにちは」
だれ?知らない? いや、知ってる? 知ってるかもしれないから、挨拶の言葉だけが先に出た。
「久しぶり。わかる?」
「・・・・・・わかる・・・・・・気がする・・・・・・」
なんだ、その答え。自分に突っ込みを入れてから、じわじわと気持ちが温かくなるのを感じた。
「あ。・・・・・・え、全然変わってる」
普通、『変わってない』っていうところだよな。そう自分で思った瞬間に、相手が笑った。
「変わってる?」
「あ、ごめ・・・・・・」
幼馴染だった。保育園行く前から、一緒に遊んでた近所の男の子。
小学校のときは、大好きな男の子で。
中学校のときは、同じ小学校出身の子。
高校生になったら、同じ中学校の卒業生・・・・・・。
「ちょっと、びっくりしたから」
「うん。久しぶり、本当、偶然。今、家に寄ったとこなんだけど、見かけたから、つい声をかけた」
顔も大人になったけど、声も大人だ。
でも、優しそうなしゃべり方、全然変わってない。
「寄った?」
「俺、今、職場の近くに住んでるから」
「あ、そうなんだ」
ああ、全然知らないや。
軽自動車の助手席が空いて、女の人が降りてきた。
何故か、びっくりしてしまって。
「あ、幼馴染なんだ」
私はひょっこりと頭を下げた。かわいい感じの女の人。
まぁ、お嫁さん、貰っててもおかしくない年だよね。
でも、何故か、聞けなかった。聞けなくて、それ以上、気の効いた会話が出てこない。
「じゃあ、私・・・・・・」
「うん。じゃあ」
バイバイと手を振って、車に乗り込む背中を見て、私は帰路を急ぐ。
ああ、なんか。なんで。
ショックなんだろう?
急に大人になって。急に彼女なんかつれて。
十数年ぶりの幼馴染が・・・・・・。
一人だけ先に行っちゃった。
みんな、あのころ、「子供だなぁ」って思ってたのにな。
私だけ、ずっとこのまま。
「大人になる方法」見つけられずにいて。
いつのまにか「大人だなぁ」って見送るんだ。
大切な人を見つけたら、大人になれるのかなぁ。
でも、その大切な人の見つけ方も、私にはよくわからないでいるんだ。
・・・・・・みんな、すごいな。
きゅっと買い物袋を握り締めなおして、とりあえず、家を目指した。
なんとなく、ちゃんと化粧しておいてよかったと思いながら。
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「日記小説」のカテゴリは、自分に起こった日常を、ちょっと小説っぽくかいたらどうなるかなと思って設けたカテゴリーです。
ネタは本当にあったことが元ですが、かなり脚色しておりますので・・・・・・フフ。
今日は、本当に十数年ぶりに幼馴染に会いました。びっくりした。
最近、休日に人と会うことが多い。「引き」の運勢なのかもとか思ったりしてます。